メンター制度とは?導入のメリットや失敗しないためのコツ

企業が抱える良くある悩みの1つとして、新入社員が定着しづらいということが挙げられます。
「転職」という概念がかつてよりも当たり前のものとして捉えられている現在、新入社員に対企業側としても定着率を上げるための施策を考える必要があるでしょう。
今回は、その定着率を上げるための施策の一つである「メンター制度」についてご紹介します。メンター制度を導入することによって企業の経営やマネジメントも含めてどのような効果が期待できるのか、導入事例を交えながら解説していきます。

メンター制度とは?

「メンター制度」とは、比較的年齢の近い先輩社員を相談役とし、新入社員のサポートを行う制度です。サポートをする先輩を「メンター」と呼び、サポートを受ける後輩を「メンティー」と呼びます。
いわゆる「新人の教育係(OJT担当)」とは違い、仕事を教えるなど業務の内容を指導することよりも、メンティーが抱えている悩みに対して相談を受けることがメンターの役割となります。相談の内容は業務に関することだけでなく職場内での人間関係や私的な悩みなど、サポートする範囲が非常に幅広いことも特徴です。

このようにOJT担当とは役割が大きく異なることから、メンターとメンティーは直属の関係を避け、別の部署の先輩社員が担当する場合もあります。

実は新入社員が早期に離職してしまう原因は、「仕事を覚えるのが大変」「仕事がきつい」など、業務そのものへの不満ではない場合も多いです。では、何が原因の1つとして挙げられるでしょうか。それは、不満や悩みを相談できる相手がいないことや、人間関係が上手くいかず会社に馴染めないことなどメンタル面のサポート不足です。

実際、辞めてしまう新入社員の中には、辞めたい本当の理由を言わずに退職していく人もいます。
メンター制度は、親身に悩みを聞き新入社員のキャリア形成のサポートを行うことによって、新入社員のメンタルケアを行いつつ、会社としても改善策を考える猶予を作ることができる制度と言えるでしょう。

メンター制度を取り入れるメリット

メンター制度を取り入れることで、どんなメリットが生まれるでしょうか。新入社員側だけでなく、会社側にも双方にメリットがあります。

<新入社員側のメリット>
メンターは相談内容を口外しないという「守秘義務」をルール化することが多く、それにより新入社員にとってはメンターが本音で相談できる存在となるため、精神的な面での安心が得られます。

直接の上司や年齢の離れた先輩では気を遣ってしまい、仕事で分からないことがあっても「こんな些細なことを質問してもいいものだろうか」と気軽に聞けないこともあるでしょう。
新入社員は業務内容を覚えることだけでなく、社会のルールや新しい環境への適応も求められ、たくさんの悩みを抱える方も少なくありません。そんな時すぐにメンターに悩みを相談することができると、心の負担が軽減され、仕事にも集中しやすくなります。

<会社側のメリット>
会社側にもメンター制度はメリットが大きいです。多くの業界では若手社員の育成は数年かけて行う場合が多いですが、一人前に成長するより前に退職されてしまうと、また新たに社員を育てる必要が出てきます。
新入社員一人にかかる教育コストや採用コストは決して安くありません。社員の定着を図ることで、新入社員に対するコストが余計にかからなくなります。

また、メンター制度でメリットがあるのはメンティー側だけではありません。メンターを任された社員も「見本となれる先輩になりたい」という意識が働くため、仕事に対する取組み姿勢が変わり、責任感を持つようになるでしょう。それだけでなく、コミュニケーションスキルやコーチングスキルも上がるため、メンター側の成長にもなります。
結果として社内全体の活性化に繋がるというのも見逃せないポイントです。

メンター制度の導入事例

メンター制度を導入した企業の事例をいくつかご紹介します。

■A社(金融業)の例
まずA社の例ですが、この会社は全国に支店を持つ大企業のため、新入社員の9割は各地の支店への配属となります。しかし、知り合いのいない土地での1人暮らしによって孤独感に苛まれる社員が増えていました。
この問題が新入社員の離職につながることを懸念したA社はメンター制度を導入。A社では会社側がメンターを指名するのではなく、自ら応募してきた熱意の強い社員をメンターとして採用。そうすることで、メンター側から積極的に新入社員とコミュニケーションを取る動きが生まれました。さらにメンターに感化されたメンティーが、翌年にメンターを志望するなど、企業として良い循環を生み出すことに成功しています。

■B社(製造業)の例
次にB社の例ですが、この会社では新入社員1人ずつに業務を教えるためのOJTトレーナーを配置しています。しかし、OJTは業務を習得させることを目的としているため、新入社員とコミュニケーションを取る時間はなかったのです。
そこでOJTトレーナーにメンターの役割も与えることにし、週に1度30分程度のメンタリングの時間を設けることにしました。お菓子を食べながらリラックスした状態で話をすることで、お互いに打ち解けることができるようになり、業務を教える際にもスムーズにいくようになりました。
通常OJTとメンターは別々の人が行う場合が多いので、これは少し変わった事例といえます。

■C社(食品業)の例
最後にC社の例を紹介します。C社は業務の内容上体力的にきついこともあり、入社後3年以内の離職率は90%以上という深刻な状況でした。
業種・職種柄、業務内容を変更することは難しいため、解決策としてメンター制度の導入を決めました。導入後、仕事にやりがいや楽しさを感じる社員が増え始め、数年後には離職率を0%とすることができたのです。
業務内容はそのままにも関わらず、メンター制度によってここまでの変化をもたらすことができました。

メンター制度で失敗しないためのコツ

メンター制度を導入するうえで最も重要なのはメンターの選出方法です。メンター制度の要となっているのは、メンターとメンティーのコミュニケーションです。そのため、「メンターといえばこの人」というような一人を用意するよりも、複数人の選択肢から新入社員の性格や相性を踏まえてメンターを決定できる体制が望ましいでしょう。

企業側はメンターとメンティーの相性を考えることが大事になるため、合わないと感じたときには組合せを変更することも検討しましょう。また、メンターとなる先輩は後輩にとって目標となるような人物が向いています。更に付け加えると、自分とはかけ離れた遠い存在ではなく、「数年後に自分もこんな先輩になりたい」と思えるような存在が理想です。
こうしてサポートを受けたメンティーがやがてメンターとなり、次の新入社員をサポートすることで企業にとっても非常に良い循環が生まれます。

最後に、メンター制度そのものが失敗に終わらないようにするためには、企業側の気配りも大切です。メンターがその責任を十分に果たすためにも、すべてをメンターに丸投げするのではなく、メンターの業務負荷を少しでも減らせるように周囲の協力を仰ぐなど人事担当者が影からサポートし、社内全体が制度を理解するように働きかけましょう。

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