ICTで実現する利用者からも介護職員からも選ばれる介護事業【経営基盤を強化するIT戦略】

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介護、人材不足、ICT化

2019年06月19日

介護は少子高齢化が進む日本の大きな課題の一つです。介護業界においては、人材不足の問題が年々深刻化しています。厚生労働省は2025年に約34万人の介護人材が不足すると予測しています。この問題を解決する手段の一つとしてICT活用による業務の効率化があります。ICTによる効率化は人材不足の解消だけでなく、介護サービスの利用者へのより良いサービス提供にもつながります。このコラムでは、介護事業の現状とそれを解決するためのICT活用のポイントについて解説します。

介護事業者の一番の課題は人材不足からくる負のスパイラル

日本では少子高齢化に伴い、労働人口の減少が進んでいます。その影響を強く受けているのが介護業界です。介護を必要とする高齢者が増え続ける一方で、その介護を担う人材の確保が追いつかず、事業者の多くが慢性的な人材不足に陥っています。厚生労働省は、介護人材の供給見込みが現状のまま推移した場合、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年には、約34万人の介護人材が不足すると推計しています。これは予想される人材需要(245万人)の約14%に相当します。

人材の不足は職員の負荷増大につながります。疲弊した職員が離職すると事業規模の縮小や労働環境の悪化がさらなる離職を招き、いっそう人材不足に陥るという負のスパイラルを生みます。すでに人材不足から事業の継続が困難になったり、新しく介護施設を建てても職員が足りないために開業できない事業者も出てきています。

国は介護人材の確保対策として、介護職員の待遇改善や人材育成、外国人の受入など様々な取り組みを始めています。離職防止、定着促進、生産性向上のための方策として期待されているのが、ICT化による業務の効率化です。
介護の仕事には、直接利用者と接する業務以外に、介護記録の作成や交代する介護職員への申し送りといった間接業務があります。しかし、介護事業者の多くは、介護記録を手書きで作成し、それを基に申し送りを行っており、これが労働時間を長くする一因になっています。経済産業省の報告(※1)によれば、入所系・通所系の介護事業者で、労働時間の12~13%が間接業務に費やされています。この部分をICT化することで、大幅な業務効率化が期待できます。

介護記録のICT化で実現する業務の効率化とスムーズな情報共有

介護事業において、ICT化によって効率化が可能な主な業務としては、「介護記録」「就業管理」「人事管理」「セキュリティー」の4つが挙げられます。
介護記録は、ICT化によって大きな生産性向上が期待できる業務です。法律の定めにより、介護事業者は利用者の状態や実施したケアの内容をきちんと記録・保管しなければなりません。

現在、多くの介護事業者では介護記録を手書きで作成しています。例えば、職員が現場で利用者の状態をメモし、それを事務所に戻ってから別の用紙に転記し、交代する介護職員への申し送りで再び同じ内容を記入、最後に日誌にまとめて書くといったように同じ内容を何度も転記する作業が発生します。転記の繰り返しは時間がかかるだけでなく、誤記や転記漏れが起こる可能性が高くなります。また、職員間での情報共有が不十分になりがちで、重要事項の連絡漏れにより事故が発生する懸念もあります。介護記録をICT化することで、転記作業が不要になり記録業務が効率化し、スムーズな情報共有が可能になります。

ICT化には、保管コストの削減や過去のデータ活用といったメリットもあります。訪問介護では、モバイル端末の利用によって記録や情報共有のためだけに事業所に戻る必要がなくなります。

ICT化のコストを考慮しても費用対効果はプラスに

介護記録に続いて、ICT化のニーズが高まっているのが、就業管理や人事管理です。これらの業務も介護業界の事情を考慮したシステムを導入することで、管理職員の負担を大きく軽減することが可能です。シフト勤務に対応した就業管理システムを導入すれば、公平かつ人員配置基準を満たしたシフトが素早く作成でき、有給休暇の確実な消化や残業時間の把握も容易になります。また、人事管理システムを導入することで、経験や資格をきちんと管理し、キャリアパスを明確に策定することが可能になります。

ICT化を検討している介護事業者にとっては、システム導入の費用対効果が気になるところです。経済産業省の報告書(※1)では、介護記録をICT化した場合の導入効果を試算しています。それによると、介護記録のICT化によって40%効率化すると仮定した場合、1事業所あたり訪問介護で2.25時間/日、通所介護で1.97時間/日、特養で8.94時間/日、特定施設で5.10時間/日の労働時間短縮効果があると算出されています。この時短効果を職員の給与に換算した場合、システム導入コストを差し引いても費用対効果はプラスになります(図1)。

また、個人情報を扱う介護事業者にとってはセキュリティーの確保も重要です。USBメモリーの紛失やウイルス感染、ファイルサーバーのデータ持ち出しやデータ改ざん、SNSからの情報漏えいなどは、事業者にとって大きなリスクとなります。社内にシステム部門を持っていない事業者では、外部のエキスパートに依頼することで、高度なセキュリティーを実現することができます。

試算では介護記録のICT化は、導入コストを差し引いてもプラスとなる
図1:介護記録のICT化によるメリット
出典:経済産業省「将来の介護需要に即した介護サービス提供に関する研究会」報告書

間接業務の軽減で利用者への介護に集中できる環境を実現

これまで介護業界でICT化が遅れていた背景には、職員の年齢層が比較的高く、PCなどの操作に慣れていないという事情がありました。しかし、その状況も変わりつつあります。今は高齢者でもスマートフォンやタブレット端末を使いこなす時代です。また、介護記録システムの使い勝手も改善されており、例えば画面から文例を選ぶだけで介護記録が作成できるような製品もあります。
導入のハードルは以前よりも大きく下がっています。また、若い人材の場合は、手書きよりもPCなどでの作業を好む人が多いでしょう。このような状況から、今後は介護事業でも本格的にICT活用が進むと考えられます。

ICTを活用して間接業務の効率化ができれば、職員は本来の業務である利用者のケアに集中できます。記録の転記のような事務作業がなくなり、公平なシフトや明確なキャリアパスの仕組みが実現できれば、職員のモチベーションは高まり、職場定着率の向上をもたらすでしょう。職員が活き活きと働ける施設は、利用者へのケアの充実につながります。利用者からも介護職員からも選ばれる介護事業の実現こそ、介護のICT化によって目指すべき方向だといえます。

1.「将来の介護需要に即した介護サービス提供に関する研究会」報告書(経済産業省)
本記事は、株式会社三菱電機ビジネスシステムの井上武志への取材に基づいて構成しています
この記事について:この記事は、情報誌「MELTOPIA」2019年6月号(No.247)に掲載されたものを転載しました

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