有給休暇取得の義務化のポイントと企業が取る対策について【2019年4月施行:働き方改革】

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人事向け、有給休暇、働き方改革

2018年11月29日

先日、厚生労働省が「平成30年 就労条件総合調査 結果の概況」を公表しました。その結果によると、平成29年度の年次有給休暇(以下、有給休暇)の取得率は51.1%(平成28年度は49.4%)と、日本企業における有給休暇の取得率はようやく50%を超えた、という結果でした。

そのような状況下で導入が決まった「有給休暇取得の義務化」は、どのような従業員が対象となり、企業はどのような対応を行うべきでしょうか。施行まであと半年を切った今、改めて制度の内容や推進方法について事例とともにご紹介します。

有給休暇取得の義務化とは

労働基準法の改正により、平成31年(2019年)4月より「一定日数の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられることとなりました。
具体的には、年に10日以上の有給休暇を付与する従業員に対し、5日以上の有給休暇の取得を義務付けるというものです。消化日数が5日未満の従業員に対しては、会社側が時期を指定して有給休暇を取得させる必要があり、違反すると労働基準法違反として6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が課せられます。

冒頭でもご紹介しましたが、これまでの日本における有給休暇消化率は決して高い水準とは言えません。多くの企業において有給休暇の取得については労働者本人にゆだねる部分が多く、職場の雰囲気によっては「有給休暇を取得することに罪悪感を覚える」という心理的な一面も含め、日本人の有給休暇の取得率は世界的に見ても低い水準です。
大手旅行サイトが2017年に実施した調査によれば、フランス・スペインの有給休暇消化率は100%、アメリカは80%、イタリア・インドは75%、韓国も67%といった結果でした。現在、政府は「2020年までに有給休暇取得率を70%にする」という目標を掲げています。前述の世界の取得率を考えれば、日本の目標値も妥当であると言えるのではないでしょうか。

では、何故政府は有給休暇取得の義務化に踏み切り、目標を設定したのか。それは、「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」を実現するためです。

従業員が休みにくく、有給休暇取得にためらいを感じるような状況では、長時間労働や働きすぎによるメンタルヘルスの悪化や、生産性・業務効率の低下を招く危険性があります。その結果、企業の成長を妨げてしまうことに繋がってしまいます。
義務化されることにより、企業は有給休暇を取得しやすい環境をしっかり整える責任が生まれます。罰則付きの制度となったことで就業規則や制度の見直し等、経営者や人事総務担当者にとっては頭を悩ます課題が増えたという印象を受けた方も多いかと思います。しかし、企業として積極的に取り組むことで、優秀な人材の流出を防ぐだけでなく従業員の満足度が上がり、仕事に対する意欲向上にも繋がることが期待されています。人材不足が叫ばれる今だからこそ、前向きに取組みたい制度と言えるのではないでしょうか。

企業が取るべき対応

今回の有給休暇取得の義務化を受けて、企業としては有給休暇取得を促進するための制度を整備する必要が出てきました。
その制度作りの一環として、有給休暇の「計画的付与」について、整備の流れをご紹介します。

(1)有給休暇取得実態を調査する

まずは自社の従業員について、有給休暇取得の実態を把握しておく必要があります。
どの人に何日の有給休暇が付与されていて、そのうち何日を取得しているのか、また全社的な有給休暇取得率は何%で、有給休暇取得について従業員はどう考えているのかなど、多角的な視点で自社の有給休暇に関する状況を調査しておきましょう。

(2)年次有給休暇の計画的付与方法を検討する

計画的付与には、「一斉付与方法」と「交替制付与方法」、「個人別付与方法」と主に3つの選択肢があります。

■一斉付与方法
会社全体もしくは事業所全体で従業員に一斉に有給休暇を取得してもらう方法です。ゴールデンウィークや年末年始の連休周辺に対象となる日を設定することが多いです。会社として業務量が少ないと思われる日があらかじめ分かっている場合などに利用しやすいです。

■交替制付与方法
部課やグループ単位で有給休暇の取得日を設定するという方法です。一斉付与によって定休日が発生することが難しい業種(流通業など)に向いています。

■個人別付与方法
従業員それぞれに対し、希望に合わせて有給休暇の消化日を設定するという方法です。例えば、自身の誕生日や個人的な記念日を有給休暇とするケースもあります。個人単位で取得状況を管理する必要がある点や、特定の日に集中してしまった場合に業務が回らなくなる可能性があるというデメリットはありますが、柔軟性を持たせることができます。

自社の業種や業務状況を踏まえた上で、一斉付与と個人別付与を組み合わせるなど検討することが求められます。

(3)就業規則を改定し労使協定を結ぶ

有給休暇の計画的付与にあたっては、就業規則による規定と労使協定の締結が必要となります。
就業規則については「5日を超えて付与した年次有給休暇について、従業員の過半数を代表する者との間に協定を締結した場合、その労使協定に定める時期に計画的に取得させる」というような旨の規定を定めます。労使協定では、計画付与の対象者や計画に定めた取得日の規定などを書面にて締結します。

「5日を超えて」とあるのは、従業員が付与された有給休暇のうち5日を除いた日数が計画的付与の対象となるからです。労働基準法第39条により、少なくとも5日は従業員が自由に取得できることを保障しなければならないと定められていますので、注意しましょう。

有給休暇取得率が上がり生産性も上がった事例

有給休暇の取得率が上がることに対し、生産性が落ちるのではという懸念を持たれがちですが、好例として“業務効率を上げ社員の意識も変わった”という会社の事例をご紹介します。

■IT関連会社:A社
マーケティングソリューション事業を展開するA社は、社員の有給休暇の取得状況を改善しようと全社員に対して「年に1回9連休を取得する」ことを義務付けました。ただ義務付けするだけでなく、一度決めた日程の変更は原則禁止、休暇期間中は会社との連絡は一切禁止という徹底ぶりです。

制度導入前は残業が当たり前、有給休暇も取りづらい雰囲気があり、担当者が急に入院した・退職してしまったなどが続き、業務が滞ってしまう事態も発生していたそうです。
導入後は社員の心身のリフレッシュに繋がるだけでなく、業務の属人化を防ぐという効果もありました。
自身の立場で考えてみるとイメージしやすいかもしれませんが、連絡を断った状態で9連休を取得するには入念な業務の引き継ぎが必要となります。
9連休の取得が年1回の義務になったことで、社員全員に業務のマニュアル化や共有文化が根ざしました。さらに、先輩社員がいないことで、若手社員の責任感が芽生えるきっかけにもなったそうです。業務内容が改善され業務効率化に発展できた事例です。

まとめ

今回、有給休暇の計画的付与の整備についてもご紹介しましたが、変えていく必要があるのは社内の制度だけではありません。
付与された有給休暇を取得することが悪いことではない、良いことなのだという「風土・雰囲気」が社内に広まらない限りは本質的な課題は解決しません。

また、業務内容や業務分担の見直しを行い、休んでも迷惑をかけてしまったと感じない仕組みを作ることも大切です。メリハリのある働き方や心身ともに身体を休めることの重要性を伝えるなど、従業員の「働き方に対する考え」を変えるための取組が、従業員のモチベーションを上げることにも繋がるでしょう。

すぐ近くに迫った義務化に向けて、早めの準備を行うことをおすすめします。

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今回のテーマであった「有給休暇取得の義務化」だけでなく、来年4月の労働基準法改正では「残業時間の上限規制」が設けられました。また、経営者(使用者)は労働時間を適性に把握する責務があり、客観的な記録を基礎とした措置を求めるガイドラインも策定されています。
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