正しく理解していますか?裁量労働制の残業の考え方や適用対象について

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人事向け、労務管理、残業

2018年07月13日

裁量労働制は、労働者が雇用者と結ぶ労働形態のうちの一つです。
両者間の協定で定めた時間分を労働時間とみなして賃金を払う形のため、「定時」という考え方が原則として存在せず、労働者にとっては仕事の進め方を自分でコントロールしやすくなるというメリットがあります。

この裁量労働制という制度、残業についての考え方が通常と異なる点や、そもそも裁量労働制が適用できる職種が限られているなど、既に採用している企業やこれから検討されている企業の雇用者側だけでなく、労働者側も把握しておくべきポイントがあります。

そこで今回は、裁量労働制について詳しく見ていきましょう。

裁量労働制の適用職種は意外に少ない

昭和62年(1987年)の労働基準法改正にて「裁量労働制」が導入され、その後、平成10年(1998年)の改正により適用範囲が拡大されたとはいえ、裁量労働制は「どの職種でも適用できる」わけではありません。

裁量労働制の適用範囲として現在法律で認められている職種は、「高度に専門的な業務を行う専門業務型」と「企画を行う企画業務型」の2種類に大別されています。
「専門業務型」は業務の性質上、業務の進め方や手段、時間配分等について雇用者側が細かい指示を出すことが難しく、労働者の裁量に大きく委ねられるような職種が対象です。
一方、「企画業務型」は、一般に企業の管理部門・間接部門と言われる事業運営上の重要な決定事業に携わる業務が対象となります。

<専門業務型の例>
デザイナー・研究者・編集者・弁護士・番組プロデューサー・システムコンサルタント業務など

<企画業務型の例>
人事・広報・経営企画・経理・営業企画など

いわゆる一般的な「営業職」については、裁量労働制の対象適用外となるのでご注意ください。
ただし、営業部門の戦略立案や目標達成のためのサポートなどを行う「営業企画」のような職種については、企画業務型として裁量労働制の適用対象となります。

裁量労働制を適用しても残業代を払う必要があるケース

そもそも「裁量労働制」とは、業務を遂行する手段や時間配分等の決定に関して労働者の裁量に委ねられており、実労働時間に関わらず事前に労使間で決めた時間を「働いた」とみなす制度です。その決めた時間を「みなし労働時間」といいます。

例えば、1日の「みなし労働時間」を8時間として裁量労働制を適用した場合、実際の労働時間が7時間でも9時間でも10時間でも、8時間労働したとして扱われるのが裁量労働制の特徴です。
そのため、残業や時間外労働という概念が存在しないという認識を労働者側も雇用者側も持っている場合があるのですが、実は裁量労働制においても、以下のケースであれば雇用者側は残業代を支払う義務が生じます。

・みなし労働時間を8時間超に設定した場合
・深夜勤務(22:00~翌05:00)をした場合
・法定休日(※)に勤務した場合

また上記以外でも、「給料のうち固定残業代がいくらかを明確に定めていない場合」においても実際に時間外労働を行った時間分の残業代を請求することができるという点も抑えておきましょう。

※「法定休日」とは、労働基準法によって定められている「最低でも週1回、もしくは4週間に4回以上労働者に与えなければならない休日のことです。

裁量労働制を適用した場合の残業代の計算方法

上記のようなケースにおいて、具体的に支払うべき残業代をどう計算すべきかをそれぞれご紹介します。

■みなし労働時間を8時間超に設定した場合
この場合、労働時間が8時間を超えた分(休憩時間は除く)について、通常賃金の25%以上の割増賃金を上乗せした分を残業代として支払う必要があります。

<1日あたりの時間外手当の計算例>
 ・割増賃金率:25%
 ・設定したみなし労働時間:9時間
 ・1時間あたりの賃金:2,000円
 ⇒2,000円×125%×1時間[8時間を超える分である1時間]=2,500円

■深夜勤務(22:00~翌05:00)をした場合
裁量労働制を適用しない労働者における通常の深夜勤務と、考え方は同じです。
22:00~~翌05:00の間に勤務した時間に応じて、通常賃金の25%以上の割増賃金を残業代として支払う必要があります。

<深夜勤務に対して支払うべき割増賃金の計算例>
 ・深夜帯の割増賃金率:30%
 ・深夜帯に勤務をした時間:3時間
 ・1時間あたりの賃金:2,000円
 ⇒2,000円×130%×3時間=7,800円

■法定休日に勤務した場合
裁量労働制を適用しない労働者における法定休日の勤務の場合と、考え方は同じです。
日曜日などの法定休日に勤務した場合には、勤務した時間に応じて35%以上の割増賃金を残業代として支払う必要があります。

<法定休日に勤務した場合に支払うべき割増賃金の計算例>
 ・法定休日労働の割増賃金率:35%
 ・法定休日に勤務をした時間:6時間
 ・1時間あたりの賃金:2,000円
 ⇒2,000円×135%×6時間=16,200円

まとめ

ここまで、裁量労働制についての適用職種や残業代の考え方についてご紹介してきました。

既に制度を導入済みの企業さまは、改めて労使協定を見直し労働基準法に違反している点がないか、運営に問題点がないかを確認してみてはいかがでしょうか。
また、今後制度の導入を検討されている場合には、まず推進する立場である人事総務や管理職の方が裁量労働制についてメリットやデメリットも踏まえ正しく理解することが重要です。その上で、社内に向けて説明会や裁量労働制度の周知を行うことで、労働者一人ひとりにも制度をきちんと理解してもらい、健全な制度運営を行えるようにしていきましょう。

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