IT搭載で進化を遂げる「防犯カメラ」

普段あまり注目されることのない「防犯カメラ」。犯罪捜査にも利用され、私たちの生活を陰から支える存在ですが、IT技術を搭載した防犯カメラの登場によって、防犯目的だけでなく、事故防止からマーケティングまで用途の拡大が進んでいます。

加速するネットワークカメラの導入

ネットワークカメラとは、カメラとコンピューターが一体化したもので、カメラ自体にIPアドレスが割り当てられるため「IPカメラ」とも呼ばれています。インターネットや無線LAN経由で映像と音声データの通信が可能なのが最大の特徴です。
これまでの方式だと、カメラ1台に対して1本のケーブルが必要で、カメラの台数が増えれば増えるほどコストが増加し、スペースの確保も問題でした。ネットワークカメラならWi-Fi環境があるところならどこでも設置・接続が可能で、コスト削減・省スペース化が図れます。
また一般的なアナログカメラの画質が38万画素程度なのに対して、ネットワークカメラの映像は100万画素以上と高精細な映像が保存できます。映像の確認も、これまでのようにモニターが並んだ管理人室でだけでなく、無線LAN経由でスマートフォンやタブレット端末からでも行えるため、柔軟性のある運用が可能です。
大手調査会社によると、日本の2015年のネットワークカメラ出荷台数は78万台で、前年比約12.7%の増加。2020年の東京オリンピック開催に向けた更なる需要の増加も予想されています。また世界的にも普及が進んでいて、2018年には全世界のネットワークカメラ出荷台数は2,600万台まで増加し、アナログカメラ(1720万台)を上回ると予想されています。

多用途利用が可能なAI搭載の防犯カメラ

ネットワークカメラの普及が進む大きな理由の一つとして挙げられるのが「多用途利用」です。ネットワークカメラから送られるデジタル映像をソフトウエアで分析・解析し、監視目的以外で利用できます。最先端のAI(人工知能)を活用した技術も積極的に開発・利用されています。

◆人物の自動追跡
ある日本企業は監視カメラで探したい人物を瞬時に判別し、リアルタイムで自動追跡する技術を開発しました。「緑色の上着を着ていてグレーのバッグを持っている男性」といったように、性別・服装・所持品など100以上の項目からAIが当てはまる人物を映像内から1秒以内に検索し、リアルタイムで自動追跡できます。デパートや競技場など広い施設でも迷子や不審者を見つけ出すのに役立ちます。

◆「買う客」の判別
監視カメラの販売を手がける企業は、これまでの膨大な来店客の映像を生かし、AIが来店客の表情や行動パターンを分析して購買意欲を分析するシステムを開発しています。リアルタイムで映像を分析し、「購入する見込みの高い来店客である」という結果を店員に通知します。その来店客を重点的に接客することで、効率的な営業売上げアップを図れるようにします。

◆不審者を事前に発見
2017年10月に東京で開催された「ITpro EXPO 2017」には、監視カメラに映る不特定多数の人物の精神状態をリアルタイムに判別する画像開発ソフトが展示されました。瞳孔の開き具合など200パターン以上のデータを解析し、攻撃性や緊張性など、あらかじめ設定された精神状態に達した人物を検知します。世界で1,000システムほどが稼働していて、ソチオリンピックでの検証では、検知された人数の92%が結果的に禁止物持ち込みや異常行動などの理由で入場拒否になるなど、システムの信頼性も高く評価されています。

◆踏切内の異常検知
鉄道電気工事などを手がける日本の企業は、踏切内の異常を検知するAIの実証実験を2018年4月まで東急世田谷線・西太子堂駅~若林駅間の若林交差点で実施しています。AIが監視カメラからの映像を分析して、自動車や人が踏切内で動けなくなるなどの異常を検知。AIが検知した異常は映像とともに、2秒以内に運転士のタブレット端末に転送され、運転席から見通しの悪い踏切内の異常にも迅速な対応が可能になります。

紹介した事例を見ると、ネットワークカメラは“守備範囲”が広く、防犯以外にもマーケティングやサービス向上など、さまざまな用途に役立てられる可能性があることが分かります。

まとめ

世界的に市場規模が大きくなっているネットワークカメラ。世界シェア率のトップ5には日本企業もランクインしています。監視カメラとしての用途を超えた新たな開発を進め、“高い技術力”で世界をリードしていくことに期待がかかります。

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