介護スタッフのストレス解決策!スタッフ側と経営側それぞれのアプローチ方法とは

「ストレス」についてはあらゆる職場で問題となる可能性がありますが、こと介護職においては精神面と体力面の両方でストレスを感じるケースが存在し、介護スタッフ本人や運営施設の責任者・経営者を悩ませている問題です。

そこで今回は、介護の現場でストレスが溜まりやすい原因や、介護スタッフ側と経営側の両方の立場から考えたストレスとの向き合い方などを紹介します。

介護業界がなぜ人手不足と言われるのか

介護スタッフがストレスを感じる根本的な原因を探っていくと、「人手不足」であることが現場の負担を増やしており、ストレスに繋がる大きな要因となっています。ではなぜ介護業界は人手不足なのでしょうか。

少子高齢化の影響により働き手自体が不足しているということも原因ではありますが、介護業界における人手不足の重大な原因としては「採用の難しさが」挙げられます。新人の募集を行っても思うように人が集まらず、少ないスタッフで働かざるを得ない施設は少なくありません。それは、「忙しい」「つらい」といった介護業界へのネガティブなイメージが広まっているほか、介護職への志望者がいたとしても福利厚生などが充実している大手施設に偏ってしまい、地方や小規模の施設には人が集まりにくい状況となっています。

実際に、その状況は介護労働安定センターが実施した「平成29年度 介護労働実態調査」に数値として現れています。調査結果を見ると、介護サービスに従事する従業員が足りないと感じている事業所は66.6%にのぼり、平成25年以降4年連続で増加しています。その理由として「採用が困難である」が88.5%を占めており、原因については「同業他社との人材獲得競争が厳しい」が56.9%、「他産業に比べて、労働条件等が良くない」が55.9%でした。[※]

一方、離職率についてはどうでしょう。
厚労省が取り纏めている「平成29年雇用動向調査」の結果では、全国の主要産業の事業所における離職率が14.9%であるのに対し、「医療、福祉」産業で見た場合の離職率は14.5%でした。介護業界だからといって離職率が高いわけではないことが分かります。

つまり、要介護者は年々増加する一方、新たなスタッフが増えないことから、今いる従業員だけで業務をこなさなければならず、結果「常に人手不足」と感じてしまうのだと言えます。

介護スタッフのストレスの良くある原因

では、介護現場で起こりやすいストレスには、どのようなものがあるのでしょうか。

■指導に関するストレス
人手不足によって多くの介護施設では「新人教育」に割く時間が削られてしまい、新人教育は先輩職員個々の「裁量」に委ねられているのではないでしょうか。また、施設内で指導マニュアルが共有されていないことも考えられます(そもそも指導マニュアルが存在しない場合もあります)。
その結果、「人によって教える内容が変わってくる」という現象が起こります。「別の人に教えてもらったやり方だったのに、怒られてしまった」と理不尽さを感じることで、ストレスが生まれてしまいます。

■閉鎖的な環境によるストレス
介護施設の「閉鎖的な環境」もストレスを増長させていると言われています。介護施設はスタッフ間の密なコミュニケーションなしに成立しない現場ですが、逆をいえば「気の合わないスタッフとも、毎日話をしなければいけない」ことも意味します。しかも人手不足だと人の入れ替わりも少ないため、苦手な同僚と顔を合わせ続けなければいけません。
先程紹介した介護労働実態調査でも、前職の介護職を辞めた理由のトップが「職場の人間関係に問題があったため(20.0%)」でした。[※]

■利用者に対するストレス
専門家である介護スタッフでも、利用者の方とのコミュニケーションがうまくとれないことでストレスを感じることもあります。特に認知症の方に対する介護は難しいとされており、暴言や暴力を受け止め続けることでストレスを感じたり、予測不能な行動に対応するため常に目が離せないといった負担からくるストレスもあります。
人手不足により一人で利用者に対応しなければならない環境ゆえ、普段であれば冷静に対応できることができなくなってしまい、その結果、ストレスを抱えてしまうこともあるでしょう。

以上のように、給与への不満や業務へのストレスという要因以外にも、スタッフ間の人間関係や運営体制が原因によるストレスを感じてしまう介護スタッフも多くいる点に、経営側は注意するべきでしょう。

【スタッフ側】介護職のストレスを解消する方法

介護スタッフが自ら実践できるストレス解消方法を幾つかご紹介します。

もしスタッフ間での人間関係にストレスを感じている場合は、介護職員一人ひとりの「介護観が違う」ことをまずは理解しましょう。
ほかのスタッフからの耳の痛い指摘に心を痛めることもあるかもしれませんが、各々の価値観を元に自分のためを思って指摘してくれていると思うと、指摘内容を受け入れやすくなります。

また、もし認知症の方に対する介護にストレスを感じているという場合は、「認知症とはどういうものなのか」を理解しスタッフ全員が知識を共有することで、ストレスが軽減されやすくなるでしょう。認知症の方に限らず、利用者の方と接する中で受けるストレスは、利用者の方との信頼関係を築くことで多くの場合は解消されるケースが多いです。
自信を持って接することができるよう自分の言動の良し悪しを日々振り返りつつ、ほかのスタッフの良いと思った接し方などを真似していくことをおすすめします。

とはいえ、どのような職場・職種であってもストレスを全く感じずに働くということは難しいことです。多くの人が何かしらのストレスを感じながら働いています。そこで重要になるのが「ストレスとの向き合い方」です。カラオケで大声を出す、趣味に没頭する…等、自分なりのストレス解消法を見つけてみてはいかがでしょうか。

【経営側】介護スタッフがイキイキと働ける職場を作るために

採用を増やし離職率を下げるためには、職場環境を見直して「働きたい」と思える職場にすることが必要です。また、経営者は従業員が感じているストレスを敏感に察知し、職場の課題として捉え、経営者自らが積極的に解決に向け取り組む必要があるでしょう。

例えば、以下のような取り組みを検討されてはいかがでしょうか。
・全スタッフのストレスチェックを定期的に実施する
・上司やグループのリーダーがスタッフに対し個人面談を行い、人間関係の悩みを聞く場を設ける
・全スタッフが同じレベルのサービスを提供できるための指導マニュアルを整備する
・人材育成制度や資格取得支援制度を整備し、スタッフのキャリアアップを支援する体制を作る
・キャリア、技能に応じた給与、待遇制度を設ける
・本人の希望にできるだけ添えるような勤務体制(パート⇔正社員への転換や、勤務時間の変更など)を整備する
・地域全体を視野に入れた活動を行い、施設の評価を高める

また、具体的な取り組み事例を2つご紹介します。

(1)インカム(インターコミュニケーションシステム:内線通話機器)の導入
ある介護施設ではスタッフ全員にインカムを持たせたました。助けが必要になった際インカムに向かって話せば、手の空いているスタッフがすぐに駆けつけれくれるようになり、特に勤務年数の短いスタッフの業務に対する不安の解消に繋がりました。リアルタイムで情報共有ができることで、一人で利用者をケアする機会が多い職場でもチームの一員として働いているという自覚や、孤独感からくる不安も解消されました。
また、スタッフ間のやり取りが無線になることで、大声でやり取りする必要もなくなり、入居者にとっても過ごしやすく静かな環境になるなどのメリットも生まれました。

(2)夜勤専門のシフトを導入
採用してもすぐに離職される悩みがあったある介護施設では、職場環境改善として夜勤専門のシフトを設けることにしました。以前は一人のスタッフが日勤と夜勤を掛け持ちする不規則なシフトでしたが、夜勤だけを担当するスタッフを置くことにしました。結果、肉体的にも精神的にも負担が軽くなっただけでなく、子育て中の主婦を日勤担当として採用できるようになり、人員確保にも繋がりました。また、スタッフ自身のやるべきことが明確になったことで、モチベーションのアップにも繋がりました。

ほんの少しだけの工夫でも、大きな成果を生む可能性があります。職場の悩みに耳を傾け、スタッフと共に意見を出し合い、イキイキと働ける職場作りを進めてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回の記事ではストレスというネガティブな話題を取り上げましたが、介護に従事している方の声を聴くと、仕事自体に対してはやりがいを感じているスタッフが非常に多い事がわかります。そのようなスタッフがストレスを感じ離職してしまうのは、本人にとっても施設にとっても非常に残念なことです。

経営側が本気になって職場の改善に取り組むことが、ひいては人材不足の解消にも繋がることでしょう。

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出典:平成29年度 介護労働実態調査(公益財団法人 介護労働安定センター)

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