テレワーク下のOJTにおける課題と成功させるポイント・スキル

テレワークを導入する企業が増えた2020年。従業員にとっては通勤がなくなり時間効率がアップするなどのメリットがある一方で、様々な理由で業務がスムーズに進まず課題を抱えている企業も少なくありません。中でも、中途社員や新人教育に関するOJTは、テレワークの導入以前と以後で方法が大きく異なってくると考えられます。
そこで、このコラムではテレワーク下におけるOJTを成功させるためのポイントや注意点を解説します。これから新入社員を迎える部門の責任者や、新人教育を担当する方はぜひ最後までお読みいただき、テレワーク下におけるOJTの参考にしてみてください。

このコラムを読んで分かること

  • テレワークでのOJTを成功させるための5つのポイント
  • テレワークでのOJTを行なう際に大切な3つのスキル

テレワーク(オンライン環境)でのOJTにおける課題

テレワークではWeb会議ツールを利用するなどして最低限のコミュニケーションは取れるものの、対面に比べるとお互いの表情や細かな仕草が見えにくく、人となりが掴みづらいという課題があります。そのため、テレワークでのOJTでは従業員同士の関係構築がしづらい環境になると言えるでしょう。

また、従来のOJTで業務内容をレクチャーする際、「具体的な説明や指導がなく、業務の姿を見せるだけ」ということが問題視されてきましたが、オンライン環境ではその「業務の姿を見せる」ことさえできません。細かなオペレーションや業務対応の仕方が十分に観察できず、OJTを受ける立場の従業員は理解するまでに時間がかかる懸念もあります。
さらに、OJTの中でわからない点や不安な点があったとしても、オンライン環境下では「今、声をかけても大丈夫だろうか」、「相手は忙しくないか」など気を遣ってしまい、コンタクトを取る頻度が対面に比べて減ってしまうことも考えられます。特に、入社して間もない新入社員や、新しい部署に配属されたばかりの従業員では尚更でしょう。

これまでのOJTは、人と密接に関わることが前提であったことが、オンライン環境へ移行することにより浮き彫りとなりました。私たちの働き方が変化したのと同様、テレワーク下でのOJTにおいても求められる内容や注意すべきポイントが変わってきたことを理解しなければなりません。

テレワーク(オンライン環境)でのOJTを成功させるための5つのポイント

テレワーク下でのOJTには、様々な課題や問題点があることをお伝えしましたが、これらの課題を解決しOJTを成功させるためにはどのような対策が求められるのでしょうか。今回は4つのポイントに分けて解説します。

(1)OJTの目的や流れを共有する
これはテレワーク下に限らず全てのOJTに共通している点ですが、OJTを行う目的や目標、一連の流れなどをあらかじめ共有しておくことが重要です。習得すべき業務の内容はもちろんですが、何をどこまでできるようになったらゴールなのかを明確にしておきましょう。
また、従来のOJTに比べて新入社員の理解度や、進捗状況を把握することが難しくなります。そこで、目標は細かく設定し、新入社員がどこまで成長したか、どこで躓いているのかを定期的に確認しましょう。

OJTをどのような目的をもって行うのか、どのような流れで行う予定なのかについてお互いに共通の認識を持つことで、テレワーク下での意識のズレを防ぎスムーズなOJTを実現できます。

(2)教える側のやり方を変える
これまでであれば、指導者が新入社員の横につき「やってもらいながら教える」ということができました。しかし、オンライン環境ではそうはいきません。
そこで、例えば「Web会議ツールを活用して画面を共有しながらまずは業務を一通り説明、その後に実践してもらう」といったように、「教える」と「実践する」を分けて行うなどの工夫をしましょう。
また、「説明の途中でも質問をしてOK」など、教える側とOJTを受ける側との間で事前にコミュニケーションが円滑に取れるよう、ルールを設けるなど取り決めをしておくこともおすすめです。

(3)定期的に話せる場を設ける
オンライン環境下でのコミュニケーション不足を解消するためには、Web会議ツールやチャットツールなどを活用して、定期的にコミュニケーションできる仕組みを作りましょう。ここで重要なのは、日程や時間帯をあらかじめ決めておくことです。不定期としてしまうと、教育する側の先輩の業務が忙しかったり、ほかの会議が入ってしまったりして時間がとれないケースも少なくありません。
例えば毎週、決められた時間を確保しておけば、スケジュールが合わないといった理由で実施を断念する心配もなくなるでしょう。

特にテレワーク環境下でのOJTは、周囲に同僚や先輩、上司がいないことで不安を感じる従業員も少なくありません。意識的に短いスパンでコミュニケーションの場を設け、従業員の不安を解消することを心がけましょう。また、コミュニケーションの場では業務に関することだけではなく、関係を深められるよう雑談を交えることもおすすめです。お互いの信頼関係の構築につながり、教えられる側が積極的に質問できたり、些細な悩みも打ち明けられたりするようになります。

(4)チャットや日報などでコミュニケーションラインを設ける
上司や先輩社員と新入社員との信頼関係を構築するためには、定期的なコミュニケーションの場を設けることが有効です。また、日々の業務でわからないことがあった場合、迅速に問題を解決してあげられるような体制を作っておくことで、新入社員の不安も解消されることでしょう。

そこで、定期的なコミュニケーションの場とは別に、日常的に気軽に連絡できるようなコミュニケーションラインを設けましょう。業務や課題で詰まってしまったところがあれば、メールやチャットツールを利用し、こまめに質問や相談ができるように促してあげることが有効です。もしも、質問や相談をもらった際に教える側の業務が忙しくても、「確認しておきます」などの一時的な返信だけでも、なるべく早く行うように心がけましょう。返信がないことで不安を抱かせないことも、テレワーク環境下のOJTでは大切です。
メールやチャットでの質問・相談を、遠慮してしまう人もいるでしょう。そのため、業務中に分からなかったことや気になる点など、質問事項をまとめて提出できるような日報を活用するのも有効です。OJTを受ける側の従業員も、教える側の業務の忙しさ、タイミングなどを気にせず、終業時に日報を提出することで悩みや質問を投げかける機会を得られます。OJTを行う側の従業員も、OJTを受けている従業員の進捗や理解度を把握しやすくなるメリットもあります。

(5)ステップアップ可能な課題を用意する
テレワークでのOJTではお互いに離れているため、こまめに業務の様子を確認しづらいデメリットがあります。そのような状況下でも着実にスキルアップを図ることができる方法として、課題を用意することが有効です。
実務に即した課題を用意し、実際に取り組んでもらうことで、OJTを受ける従業員は業務内容がイメージしやすく、打ち合わせの際に質問もしやすくなるでしょう。また、習熟度に応じて課題の難易度やレベルを上げていくことで、自身がステップアップしている手応えを得ることができます。

OJTを行う側は、課題に取り組みステップアップしていく従業員を、積極的に褒めて評価することを心がけることが大切です。OJTに取り組むことで得られる達成感や自信をより大きなものにできるだけでなく、ポジティブな評価を伝えることでコミュニケーションもより円滑に図れるようになるでしょう。

テレワークOJTを円滑に行うために必要な3つのスキル

テレワークOJTを円滑に行うためには、教える側の従業員はどのようなスキルを高め、意識すべきなのでしょうか。今回は重要な3つのスキルを解説します。

わかりやすく伝える力

OJTの対象となる従業員は、業務に関する基礎知識が備わっていないケースも少なくありません。例えばその業界では当たり前に使われている言葉であっても、OJTを受ける従業員には意味が伝わらないこともあるでしょう。専門用語を極力使うことなく、誰でも理解できる言葉で表現することは、わかりやすく伝えるための第一歩と言えます。また、結論を先に伝えたり5W1Hを取り入れて説明したりするなど、意識的にわかりやすい表現方法を選択することが重要です。

さらに、事前にOJT用のマニュアルを作成し、「どんな目的・スケジュールで課題に取り組んでもらうのか」まで言語化することも有効です。その際、マニュアルは自分だけでなく若手の従業員にもチェックしてもらい、伝えたい内容が明確でわかりやすいかどうかを見てもらうと良いでしょう。読みやすいマニュアルを最初に共有することで、OJTの開始時に共通の認識を得やすくなります。
なお、マニュアルにはこれまでの対面形式でのOJTとオンライン形式でのOJTで異なる点も、忘れずに記載するようにしましょう。マニュアルに沿って研修を進めることで、OJTを受ける従業員がOJTの目的やゴールを見失わず、取り組みやすくなるでしょう。

緊張を解くアイスブレイク力

初対面の人とのコミュニケーションは、誰しも緊張してしまうものです。特に新入社員や新たな部署に配属されたばかりの従業員にとっては、慣れない環境下ということもあり、自分の個性や持ち味を出せないことも多いでしょう。そこで、緊張をほぐすためのアイスブレイクが重要となります。

例えばOJTに入る前に簡単な自己紹介をすることはもちろんですが、時事関連の話題や趣味の話題を広げてみるのも良いでしょう。本題である研修にいきなり入るのではなく、まずはアイスブレイクとして雑談などを交えることによって、緊張を緩和できます。

段階に適した課題の選定力

テレワークOJTを成功させるためのポイントでも紹介しましたが、課題の選定は特に重要な要素です。最初から高いレベルの課題を出してしまうと自信を喪失させてしまいますが、反対に低すぎるレベルの課題ばかりでは、OJTを受ける側が成長を実感しづらいものです。OJTを受ける従業員の理解度や習熟度を正確に見極めたうえで、基礎的な課題から応用的な課題を段階的に取り入れてみましょう。

課題の難易度は個人によって感覚が異なるでしょう。行なってもらう課題に無理がないかどうか、定期的にヒアリングすることも忘れないでください。個人の感覚で課題を用意すると難しすぎたり、かえって簡単すぎたりする可能性があります。自分がどのように業務を覚えていったのかをもとに、OJT経験のある従業員からの助言も受けながら、無理のない範囲で課題を選んであげましょう。

まとめ

テレワーク時代に対応したOJTを円滑に進めていくためには、企業および個人がこれまでとは違った方法を模索することが求められます。企業では、オフライン環境でのOJTマニュアルを改良し、オンライン環境に対応したOJTマニュアルを策定することが重要です。一方、教える側の従業員は、いっそう密なコミュニケーションをとれるよう配慮する必要があるでしょう。

これまで問題視されてきた「具体的な説明や指導がなく、業務の姿を見せるだけ」というOJTでは、今後立ち行かなくなるでしょう。テレワーク環境下であっても質の高いOJTを行うために、従業員それぞれの性格や仕事ぶりに合わせて適切なOJTを模索していくことが求められるのではないでしょうか。

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