【令和3年度分】年末調整の変更点は?電子化への取り組みや必要な準備

急速に進んだ働き方改革により、脱ハンコ・ペーパーレス化への動きが加速しています。また、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、各種申請・手続きの電子化も進められています。給与所得者が毎年行わなければならない年末調整や、住宅ローンを組んだ年などに行う確定申告も、電子化推進への流れは例外ではありません。

本コラムでは、令和3年度分の年末調整における新たな変更点や、年末調整の電子化を進めるための準備などについて解説します。これから始まる年末調整業務を前に、人事・労務担当者の皆様には今一度変更点などを確認いただけたらと思います。

このコラムを読んで分かること

  • 令和3年分の年末調整における変更点
  • 政府による年末調整電子化への取組と、電子化するために必要な準備

令和3年分の年末調整における4つの変更点

国税庁は、令和2年10月から年末調整や確定申告のペーパーレス化を進めており、各納税者および企業の人事・労務担当者の負担軽減を図っています。
また、令和3年度の税制改正ではコロナ禍による経済的影響やデジタル社会の実現を推進するための内容が盛り込まれ、源泉所得税関係に関する内容についても見直しが行われました。

ここからは、令和3年4月に発表された「源泉所得税の改正のあらまし」を参考に、令和3年度分年末調整における変更点について見ていきましょう。

(1)税務関係書類への押印義務が廃止となった

令和2年度に行政手続きにまつわる各種書類への押印が廃止され、この影響を受けて税務関係書類も原則押印不要となりました。
その結果、扶養控除等申告書や保険料控除申告書など、年末調整関係書類に提出者である従業員個人の印鑑を押す必要がなくなりました。
国税庁のサイトでは押印欄のない申告書を順次公開しており、押印欄のある旧式の申告書を使う場合も押印を省略できます。

ただし、実印の押印や印鑑証明書の添付が必要な書類については、この限りではありません。

(2)電子化のための事前申請が不要となった

電子データを用いて年末調整などの手続きを行いたい場合、従来はあらかじめ年末調整の電子化を税務署に申請して承認を受けなければなりませんでした。申請手続き後、実際に運用できるようになるまで最大2カ月かかったため、申請を忘れたり申請が遅れたりすると思うように制度を利用できないこともありました。

今回の法改正により、令和3年(2021年)4月1日以降に提出する一部申告書は、税務署長による承認が不要(事前申請は不要)となっています。事前申請が不要となった申告書は、下記の通りです。

  1. 給与所得者の扶養控除等申告書
  2. 従たる給与についての扶養控除等申告書
  3. 給与所得者の配偶者控除等申告書
  4. 給与所得者の基礎控除申告書
  5. 給与所得者の保険料控除申告書
  6. 給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書
  7. 所得金額調整控除申告書
  8. 退職所得の受給に関する申告書
  9. 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書

尚、平成31年(令和元年)1月1日以降に入居または改修した家屋に関する住宅ローン控除を受けたい場合、電子データによる住宅ローン控除申請書を用いることができます。この場合、金融機関などに発行してもらう控除証明書や年末残高等証明書も電子化の対象です。
平成30年12月31日以前に入居または改修した家屋の住宅ローンについては対象外となるため、従来通り書面で提出します。(※)

(3)退職所得課税が見直された

従来の退職所得金額は、退職手当等を含む収入金から勤続年数に応じて算出された「退職所得控除額」を差し引いた残額から、さらに1/2相当となっていました。
しかし、令和3年度の法改正により、5年以下の勤続年数である役員以外の従業員が受け取る「退職所得の金額」の計算方法が変わりました。
収入金額から退職所得控除額を差し引いた額が300万円を超える場合は、1/2課税適用がされなくなります。尚、300万円以下の場合は、従来通り2分の1課税が適用されます。

上記の計算方法は令和4年以降の所得税に適用されるため、2021年の年末調整に直接的な影響はありませんが、念頭に置いておくとよいでしょう。

(4)住宅ローン控除の特例が見直された

平成31年(令和元年)の消費税率引き上げやコロナ禍による経済的影響を受け、住宅ローン控除期間が10年から13年に延長されました。以下の条件をすべて満たす場合が、控除対象となります。

  • 令和2年(2020年)10月~令和3年(2021年)9月に新築注文住宅を契約、または令和2年12月~令和3年11月に分譲住宅・中古住宅・増改築を契約
  • 令和3年1月1日〜令和4年(2022年)12月31日までに入居

また、適用要件の見直しも実施されました。

  • 床面積が40平米(※)以上 ※以前は50平米以上だった
  • 床面積が40平米以上50平米未満の場合は、合計所得金額が1,000万円以下

令和3年度で初めて控除を受ける場合は従業員自身が確定申告をする必要がありますが、2年目以降は年末調整での対応となります。

政府による電子化への取り組み

近年のIT技術の進歩や働き方改革の普及を機に、国を挙げて電子化が進められています。パソコンやインターネットを使って諸手続きを簡便化することは、コロナ禍以降の「新しい生活様式」を実践するうえでも重要です。
ここからは、政府が進めている電子化への取組の一例をご紹介します。

「年調ソフト」の無料提供

年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)は、パソコンやスマホで年末調整申告書データが作成できる従業員向け無料ソフトです。国税庁が提供しており、公式アプリストアから入手することができます。
入力した情報を元に各控除が適用できるかを自動で判断してくれる為、確認の手間やミスなどを軽減できます。また、マイナポータルと連携することで各種控除証明書のデータを取得することも可能なため、簡便化を図ることもできます。

~ちょこっとメモ:マイナポータルについて~

マイナポータルとは、各種行政手続きをワンストップで行うための公的なオンラインサービスです。一部のサービスを除いて、マイナポータルを利用するためにはマイナンバーカードが必要です。
マイナポータル連携を活用すると、年末調整に必要な控除証明書などの一括取得と各種申告書への自動入力が可能となります。

「電子提出義務」の引き下げ

令和3年1月1日以降に提出する法定調書の提出義務基準が、調書1種類につき1,000枚以上から100枚以上に引き下げられました。
法定調書とは、源泉徴収票や支払調書などのように税務署へ提出しなければならない書類の総称です。前々年の提出すべき調書が一定数以上となる場合、e-Taxまたは光ディスクなどで提出する必要があります。
例えば令和2年(2020年)に提出した給与所得の源泉徴収票が100枚以上だった場合、令和4年(2022年)は給与所得の源泉徴収票の電子提出が必要です。

e-Tax又は光ディスク等による法定調書等の提出は、大量の調書を1枚の光ディスク等で提出することができるため、事務処理の省略化につながります。また、支店や工場等の提出分もまとめて本店等の所轄税務署長に一括提出できるなどのメリットがあります。

年末調整を電子化するために必要な準備

多くの企業では、その年の最後の給与が支払われる12月には年末調整が終わっているのが一般的です。年末調整を電子化したい場合は、遅くとも11月中旬までには準備を済ませておく必要があるでしょう。特にこれまで紙による年末調整を行っていた企業が電子申請に切り替える場合、進め方によっては従業員側の準備に時間を要するケースもあるため、なるべく早めに準備を開始しましょう。

申告書作成ソフトの導入

申告書作成ソフトを用いて計算や入力を自動化することで、書類作成や内容確認の手間を大幅に軽減できます。クラウドタイプのソフトを使えば、リモートワーカーが多い企業などでもスムーズに年末調整を進めることが可能です。

国税庁の年調ソフトのほかにも様々な申告書作成ソフトが登場しており、また自社で導入済みの給与管理ソフトなども年末調整に対応できることもあります。ソフトによって特徴が異なるため、自社に適したものを選ぶとよいでしょう。

従業員への周知

せっかく年末調整の電子化を進めても、申告書を作成する側である従業員にしっかり周知されていなければかえって手間やトラブルが増える恐れがあります。これまで書面による年末調整を行なっていた場合や申告書の作成手順に変更があった場合は、新しい仕組みや手順について早めに全従業員へ周知しましょう。パソコンやスマホの操作が苦手な従業員がいる場合は、きちんとフォローすることも大切です。

マイナポータル連携を使う場合はマイナンバーカード等の事前準備が必要ですが、従業員の中にはマイナンバーカードを持っていない人もいるでしょう。マイナンバーカードを新たに作る場合は申請から受取までに1~2カ月かかるため、急ぎ保有状況を確認されることをおすすめします。

まとめ

ここまで、令和3年分の年末調整における新たな変更点や、年末調整の電子化を進めるための準備などについて解説してきました。改めて、今回のポイントをまとめます。

<このコラムのPOINT>

  • 令和3年分の年末調整には、年末調整電子化の事前申請廃止や押印義務廃止をはじめ4つの変更点がある
  • 政府は、年調ソフトの無料提供やマイナポータルの本格運用などを通じて年末調整の電子化を後押ししている
  • 自社で年末調整の電子化を進めるためには、早めの準備と従業員への周知が欠かせない

多くの企業が年末調整を行う11月~12月は、公私ともに慌ただしくなりやすい時期です。年末調整に関する業務を電子化することにより、従業員の手間を減らすだけでなく人事・労務担当者や各従業員の工数を削減でき、余計なストレスも防げるでしょう。

電子化の事前申請廃止や押印義務が不要になるなど、国としても電子化に向けて積極的な動きを見せています。今年度分の対応が難しい場合でも、来年度に向けて電子化を検討するきっかけとされてはいかがでしょうか。

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