関係法令を守り、従業員の健康も守る。就業管理の重要性やシステムが重宝されるワケとは

全従業員の客観的な方法による労働時間の把握が義務化された流れを受けて、企業には法に則った適正な就業管理の実施が求められています。しかし、中小企業では紙やExcelでの就業管理を続けているケースも多く、法改正や昨今の多様化する働き方への対応が追い付いていない企業も少なくありません。
今回は、就業管理にまつわる法改正や中小企業における現状をもとに、就業管理をより効率良く進めるための方法や、注目されている就業管理システムを導入した際のメリットなどについて、順を追って解説をしていきます。

就業管理にまつわる法改正

就業管理を適切に進めるためには、国で定められている法律の内容を理解することが必須です。初めに、就業管理に関する最新の法律情報について述べていきます。

2023年4月の施行内容

2010年の法改正により大企業のみに実施されていた「月60時間超割増率引き上げ」が、2023年4月より中小企業に対しても適用されます。
法改正当初は経営への影響が多いとされる中小企業に対しては猶予措置が取られ、25%のまま据え置きとなっていました。しかし、2019年に働き方改革関連法が施行された流れを受け、2023年以降は企業の規模にかかわらず1ヶ月間に60時間を超える時間外労働の割増賃金率は「50%」に統一されます。

特定業種も時間外労働の上限規制に

時間外労働の上限規制は、2019年の働き方改革関連法で制定された新制度です。これまでは強制力がなかった時間外労働の上限について、今後は臨時的な特別事情がない限り「1ヶ月あたり45時間、1年あたり360時間」までと定められました。

ただし、制定当初は、上限規制の適用が猶予されている業種が複数ありました。たとえば、建設業や運送業、医師などがこれに該当します。
この猶予措置の期間は2024年3月末までとなり、いよいよ猶予措置の終了が迫っています。猶予措置が撤廃された後は、前述の業種についても新たに時間外労働の上限規制対象となります。

臨時的な特別事情とは

臨時的な特別事情とは、通常では予測することができないような作業量の増加に伴い、臨時的に労働をさせなければならないケースをいいます。ただし、このようなケースにおいて、労使間で合意があった場合でも、以下の内容を満たすような働き方をさせなければなりません。

①時間外労働の合計が年間で720時間以内
②時間外労働と休⽇労働の合計が1ヶ月あたり100時間未満
③時間外労働と休⽇労働の合計で、「2~6ヶ月平均」のそれぞれがすべて1ヶ月当たり80時間以内
④時間外労働が1ヶ月あたり45時間を超えることができるのは、1年で6ヶ月まで

ただし、猶予措置が撤廃される予定の業種については、次で述べるとおり例外要件が設けられています。

猶予措置が撤廃される予定の業種とは

2024年4月以降、以下の業種などは上限規制に関する取り扱いが変更になります。

(1)建設事業

2024年4月以降は上限規制がすべて撤廃となります。ただし、災害発生時の復旧や復興にまつわる事業に携わる場合は、時間外労働(休日労働含む)が1ヶ月あたり100時間未満(上記②)、2~6ヶ月間の平均労働時間が80時間以内となる(上記③)規制の適用はありません。

(2)運送業務

2024年4月以降は、特別条項付き36協定を締結する場合の年間時間外労働の上限が960時間になります。ただし、時間外労働(休日労働含む)が1ヶ月あたり100時間未満(上記②)、2~6ヶ月間の平均労働時間が80時間以内となる(上記③)規制の適用はありません。また、時間外労働が1ヶ月あたり45時間を超える月が年間6ヶ月まで(上記④)という規制の適用もありません。

(3)医師

2024年4月以降の上限時間については、医師の区分により以下のとおり設定されます。
■A水準(一般の勤務医)
時間外労働(休日労働含む)が1ヶ月あたり100時間未満、1年あたり960時間以下
■B水準(地域医療確保のため長時間労働が必要となる医師)
時間外労働(休日労働含む)が1ヶ月あたり100時間未満、1年あたり1,860時間以下
■C水準(高度な技能の獲得を目指すために集中的に症例経験を積む必要がある医師)
時間外労働(休日労働含む)が1ヶ月あたり100時間未満、1年あたり1,860時間以下

[出典:医師の働き方改革に関する検討会報告書の概要「医師の時間外労働規制について①」(厚生労働省)
(4)学校の教員

学校で勤務する教員に関しては、時間外労働の上限規制に対する明確な罰則規定が設けられていません。今後、学校で行われる業務の見直しと並行し、具体的な規制が設けられる可能性がありますが、具体的な施行時期の発表は設けられていないのが現状です。
ただし、教員の長時間労働問題は深刻な状況が続いていることや、労働基準監督署でも指導の強化を図っている状況でもあることから、教員の就業管理に関して取り組みを開始している学校も増加傾向にあります。

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中小企業における就業管理の現状

ここまでの項目で、すでに改正された内容や今後実施される予定である内容について解説をしてきました。ここでは、筆者の経験をもとに中小企業における就業管理の現状を解説します。

中小企業の場合、大企業と比較すると従業員一人ひとりが携わる業務が多く、会社の社長自らが営業活動を行うといったケースもあります。したがって、他の業務に追われ、勤怠の集計まではできても、従業員一人ひとりの遵法管理は二の次となり、最新の法改正に対応できていない危険性があります。

会社の経営者や担当者ができるだけ効率良く就業管理を進めるための対応は、むしろ中小企業にこそ必要であるといえるでしょう。

就業管理で気を付けるべきポイントとは

就業管理の現状を改善するためには、各企業で管理方法の見直しを含め、従業員が安心して働くことができるような環境づくりを行う必要があります。ここでは、各企業で法改正の内容に即した形で就業管理を行うために気をつけるべきポイントを解説していきます。

健康管理を意識した勤怠の把握

これまでも散々取り上げられてきた長時間労働に関する諸問題に新型コロナウイルス感染症などの影響も加わり、現代の労働者はさまざまなストレスに直面しながら就労を続けています。少子高齢化による労働力不足も深刻となり、今後は従業員一人ひとりの存在が会社の存続にとって重要な存在となります。
したがって、従業員の就業管理を実施する際には健康管理もあわせて対応することが、各企業にとって急務とされています。

従業員が健やかな状態で公私を過ごすことができるよう、従業員の健康状態をたもつための管理をすることを「健康経営」といいます。この健康経営を実施することにより、従業員がモチベーションを維持しながら仕事をすることが可能となり、職場の活性化や生産性の向上へとつながる効果があります。

具体例としては、従業員50名以上の事業所向けに法令で実施が義務づけられている「ストレスチェック」をもとに従業員の健康状況を管理する方法や、長時間労働を予防するために従業員の担当業務内容に偏りがないか見直す方法、メタボ予備軍に対して生活習慣に関する指導を行う方法、定期的な面談によるメンタルチェックを実施する方法など、従業員の健康を保つための対応策が挙げられます。

従業員の健康を保つための具体例としては、これらのような対応策が挙げられます。

・「ストレスチェック」をもとに従業員の健康状況を管理する(※)
・長時間労働を予防するために従業員の担当業務内容に偏りがないか見直す
・メタボ予備軍に対して生活習慣に関する指導を行う
・定期的な面談によるメンタルチェックを実施する
・休暇の取得状況を確認し有休が取りやすい体制をつくる

従業員50名以上の事業所向けに法令で実施が義務づけられています

法令を遵守した勤怠管理の実施

従業員の労働時間の把握や就業管理の実施に関する明確な罰則規定は設けられていません。ただし、賃金台帳や出勤簿を適切に作成・管理をしていなかった場合は、労働基準法違反として30万円以下の罰金刑に処せられる可能性があります。

また、時間外労働の上限規制に違反をした場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科せられる危険性もあるので、各社は法律を遵守した上で適切に就業管理を実施する必要があります。

対策としては、まずは法定三帳簿として知られている「出勤簿、賃金台帳、労働者名簿」の内容が現状に沿った適切なものであるかを確認することから開始してみてはいかがでしょうか。これらの帳簿は、勤怠管理の基本となるものであり、記載しなければならない事項や保管期間が定められています。また、有給休暇や残業時間の確認と、賃金が実態に沿って適切に支払われているかを再度見直してみる必要もあるでしょう。

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今後を見越した就業管理方法とは

ここでは、法改正を見据えた就業管理方法や注意点などを述べていきます。

就業管理の現状洗い出し・問題提起

まず、自社で行っている就業管理の方法を確認していきましょう。現在の就業管理体制に問題がある場合は、どのような部分が不安視されているのかを洗い出していきます。

たとえば、時間外労働を申告制にしている場合は、労働者本人の思い違いなどから実態と申告内容にズレが生じる可能性があります。特に昨今ではコロナ禍の流れを受け、在宅勤務を行うケースが激増していますが、昔ながらの紙媒体やタイムレコーダーを使っている会社の場合、従業員同士が見えない状況では正しい就業管理が実施できない可能性があります。

就業管理システムの活用

就業管理を管理する方法として、タイムカードやExcelファイル、自社システムを導入しての管理などさまざまな方法が挙げられますが、今後さらなる法改正が行われてもスムーズに対応するためには、「就業管理システム」を活用する方法が最も効果的でしょう。

就業管理システムを利用するメリットとしては、まずは人の手による計算ミスや把握ミスを防ぐことができるという点があります。毎月の締切日から給与支払日という限られた時間の中で、各従業員の就業時間や休憩の取得、有給休暇取得状況などの就労実態を確認し、時間外労働の上限規制にかからないかなどの就業管理を行った上で給与計算を実施する煩わしさから解放されることで、人事労務担当者がほかの業務に注力することができます。

次に、従業員一人ひとりの就業実態が確認できるため、長時間労働の危険性を発見しやすくなる点が挙げられます。経営者が外出先でもシステムを介して従業員の状況を把握できるため、部署や担当ごとの残業実態をひと目で把握でき、人材配置やジョブローテーションのきっかけになったという実例もあります。

また、従業員がオフィスにいない場合でも勤怠情報をリアルタイムで反映させることができるため、在宅勤務やサテライトオフィスなど、場所にこだわらない働き方が実現し、従業員の心身負担が軽減するという効果も期待できるでしょう。

より良い就業管理システムを選ぶためには

就業管理システムを選択する基準としては、まずは自社のスタイルに沿っていることと、多様な働き方を見据えて、場所にとらわれずオンラインで就業管理の確認ができることなどがあります。

何より、これからシステムを導入する中小企業にとって最も重要なポイントの一つは、システムのサポート体制が充実していることでしょう。システムの導入から会社のルールにあわせた稼働、そして困った時のヘルプ体制がしっかりしている企業のシステムを選ぶことで、ストレスなく就業管理を実施することができます。

三菱電機ITソリューションズが展開する「ALIVE SOLUTION TA 就業システム」は、最新の法改正への対応だけでなく、リアルタイムでの管理やサポート体制が充実しているので、効果的に活用することができるはずです。ぜひこの機会に、検討されてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

加藤 知美
社会保険労務士

経歴・ご紹介:愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。
総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。

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