IIoT(インダストリアルloT)とは?loTとの違いやメリット・デメリットも解説

IoT(モノのインターネット)という言葉が浸透し始めている今、産業界にもIoTを活用した「IIoT」という概念が生まれました。IIoTには、生産効率の向上はもちろん、イノベーションが促進されるという利点もあり、製造や物流、輸送、農業、医療など様々な業界に多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。

本コラムでは、IIoTの概要や、IIoT化のメリットから課題まで詳しく解説していきます。また、IIoTを導入している産業の具体例なども紹介しますので、ぜひご一読ください。

このコラムを読んで分かること

  • IIoTの概要やIIoTでできること
  • IIoTのメリットと注意点

【目次】

  • IIoT(Industrial IoT:インダストリアルloT)とは?
  • IIoTのメリット
  • IIoTの注意点
  • まとめ

IIoT(Industrial IoT:インダストリアルloT)とは?

IIoT(Industrial IoT:インダストリアルloT)の「Industrial」 を直訳すると「工業の」や「産業用の」という意味で、つまりIIoTとは「産業用のモノ」に特化したIoTということです。

まず、IoT(Internet of Things)とは、「モノのインターネット」と呼ばれていて、従来インターネットに接続されていなかった様々なモノ(住宅、建物、家電製品、電子機器など)をインターネットにつなぐことで、相互にアクセスが可能になる仕組みを指します。

このIoTの仕組みを、産業用の機械や設備に活用したものがIIoTになります。産業機械や装置、設備、システム、人の動きなどをインターネットによって相互接続することによって、リアルタイムでの現状分析が可能になり、現場作業の効率化や見える化が実現できます。

IIoTによる成長の可能性は大きく、アメリカのコンサルティング会社によると、2030年までに15兆ドルの経済的価値を生み出すとの予測もあります。これから成長が見込まれるIIoTについて、IoTとの違いや、IIoTでできることについて説明していきます。

IIoTとIoTの違い

前述でも説明したとおり、IoTは住宅や家電製品、自動車などプライベートなものが接続対象なのに対して、IIoTは産業分野の機械や装置、各工程の情報、人の動きなどが対象となります。

IIoTは、産業分野での業務効率化や安定性向上を目指すものであるため、IoTよりも高度なシステムを組むことが必須の条件となっており、以下のような特性が求められます。

  • 常時稼働
  • システムの安定性や堅牢性
  • 高度なアクセスレベルの制御
  • 十分なネットワーク帯域

IIoTは製造や物流、輸送など産業分野の現場で利用されるため、常時稼働が原則です。また、業務上の機密情報や知的財産を取り扱うこともあるため、システムの安定性や堅牢性、アクセスレベルの制御も必要になります。
さらに、工場などの大規模な施設では多数の機器と接続されるため、それらを相互にネットワーク通信するために十分なネットワーク帯域を確保する必要があります。

このように、高度な条件が求められる点がIoTとの大きな違いです。

IIoTでできること

IIoTでは、機械や設備などにセンサーやカメラを設置することで、リアルタイムに情報を収集できるようになります。その集めたデータを共有・分析することで、製造工程の管理や製品の品質管理、工場設備の安全管理など、様々な管理業務の効率化を実現します。
ここではIIoTの活用によって、各業界でどのような変化をもたらすのか、紹介していきます。

製造業でのIIoTの活用

製造工場でIIoTを活用すると、工場内の機器の稼働状態や人の流れをデータ化して収集できます。これらのデータをもとに製造進捗や稼働率などを把握できるようになり、製造プロセスの調整や作業効率改善のための施策の検討ができるようになります。
また、設備の異常動作、故障の前兆を検知してアラートを上げるようにしておけば、故障する前にメンテナンスが可能になり、設備トラブルによる生産停止や不良品の発生を事前に防ぐことも可能です。

農業でのIIoTの活用

農業にIIoTを導入すれば、天候や土壌の状態、生育状態などのデータを収集できるようになります。これらのデータを分析し、ロボットトラクターや自動水管理システム、農薬散布ドローンなどと一緒に活用すれば、適切なタイミングでの水や肥料の散布なども可能になり、作業の自動化ができます。
作業の自動化が進むことで、労働時間の短縮や、人手不足で広げられなかった農場の拡大も可能になり、生産量を増やすこともできます。

また、収集した様々なデータを蓄積し公開することで、農業の未経験者や初心者でも生産管理や栽培ノウハウを取得しやすくなり、農場の後継者不足や労働力不足の解決にも役立てられます。

IIoTのメリット

ここでは、IIoTの活用によるメリットについて紹介します。

製造費用の削減、製品価値向上

IIoTを活用することで、製造ラインをリアルタイムで監視することができ、製造ラインの異常や問題が起きたときには、素早くセンサーが反応してオペレーターに知らせることができます。そのため、ライン停止などトラブルへの対処が早くなり、無駄な時間やコストを削減することが可能になります。
また、蓄積されたデータを分析することで、製品の設計を改善したり、工程を見直したりできるため、品質の安定化や生産効率の向上が見込めます。

製造から消費者への提供までがスムーズ

IIoTを活用すれば、材料の仕入れや製造、販売に至るまでのデータを一元管理できるようになり、サプライチェーン全体の流れを可視化することができます。サプライチェーンの各工程が見える化されることで、どの工程に問題や課題があるのかを見つけやすくなります。
例えば、倉庫管理で活用すれば、荷物に搭載したタグを読み取ることで在庫状態をリアルタイムに管理できるようになります。また、在庫状況や受発注データを分析して余剰在庫を自動的に検出し、生産数を調整することも可能です。
このようにIIoTによって、各工程を見える化することで、製造から消費者への提供までの無駄をなくし、サプライチェーンの最適化を実現できます。

イノベーション促進

IIoTを活用することで、工場や流通センター、倉庫、カスタマーサポートなど他の部署との連携もスムーズになります。その結果、生産工程や流通方法を改善したり、多様化する消費者のニーズに応えてパーソナライズされた機能を提供したり、新しい製品を開発したりと、イノベーションの促進につなげることができます。

他にも、IIoTで得られたデータを使うことで、コンピューター上にデジタルツインを再現することが可能になります。デジタルツインとは、現実の世界の製造工程や設備をコンピューター上に再現したもので、現実世界では簡単に試すことができない、設備の移動や製造ラインの変更がシミュレーションできるので、製造工程や流通の改善方法を見つけやすくなります。また、新しい製品の開発のために必要なプロトタイプのシミュレーションなども可能になります。

IIoTの注意点

IIoTを活用することでたくさんのメリットがありますが、いくつか課題も存在します。ここでは、IIoTの活用においての課題や注意点などを解説していきます。

(1)セキュリティー対策が必要

IIoTは、産業用の機器や設備、センサーがインターネットに接続され、生産情報や業務上の機密情報などのデータがサーバーやクラウドに蓄積されます。そのため、常にサイバー攻撃の脅威にさらされるため、セキュリティー対策が必須です。
工場などが不正アクセスを受ければ、遠隔操作され正常に稼働できなくなり、大きな損害を被ることもあるため、セキュリティーに対する課題を理解し、対策を行うことが重要です。

(2)ネットワーク回線の遅延

IIoTでは、機械や設備など産業用のあらゆるものをネットワークに接続します。そのため、情報量が増加してネットワーク帯域を圧迫し、遅延が発生する可能性があります。
通信の遅延が発生すれば、業務に支障がでることもあるため、リアルタイムな情報処理が必要な場合はネットワーク回線の高速化と大容量化が、IIoTを構築するために必須となります。

まとめ

今回は、IIoT(インダストリアルIoT)について、概要やできること、メリット、注意点などをお伝えしてきました。
今回の内容を改めてまとめます。

<このコラムのPOINT>

  • IIoTとは、「産業用のモノのインターネット」のこと
  • 機械や設備にセンサーを取り付けることで、あらゆるデータをネットワーク経由で取得できる
  • IIoTを活用することでコストの削減、サプライチェーンの見直し、イノベーションの促進などが期待できる
  • IIoTを導入するときは、セキュリティー対策やネットワーク回線の強化対策の検討が必要

IIoTは製造業だけでなく、輸送業やエネルギー業など様々な業界に広がって浸透していくことが予想されています。IIoTが産業にもたらす変化は非常に大きなもとなるでしょうし、多くのメリットがあります。しかし一方で、サイバー攻撃などのリスクがあることも覚えておきましょう。
これからの事業を成功に導いていくために、IIoTに関する情報へのアンテナを立てておくことをおすすめします。

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